打楽器

ジョリヴェ 打楽器協奏曲 Concerto pour percussion et orchestre (Jolivet)

作曲者 Andre Jolivet(アンドレ・ジョリヴェ)
出版年 1958年

出版社 Salabert

編成 打楽器独奏+オーケストラ(変則的な2管編成)
《2Fl.(2番はPicc.持ち替え),Ob.,E.H.,A.Sax.,Cl.(Eb),Cl.(Bb),2Bsn.,2Hn.(F),2Trp.(C),2Trb.,Tub.,Pf.,弦5部》

使用楽器
1楽章:ティンパニ×4、スネア・ドラム×2(またはスネア・ドラムとテナー・ドラム)※1、ウッド・ブロック
2楽章:ヴィブラフォン、サスペンデッド・シンバル、チャイナ・シンバル
3楽章:シロフォン、鞭、ラチェット、カウベル×3
4楽章:ウッド・ブロック、木魚×3、鈴、ハイ・ハット、合わせシンバル、サスペンデッド・シンバル、チャイナ・シンバル、スネア・ドラム、トムトム×3、ベース・ドラム※2

尚、1,4楽章のS.D.,W.B.及び2,4楽章のSus.Cym.,China Cym.は共用不可

※1 楽譜の指示はCaisse-claireとTambour militaire。両方ともSnare Drumを意味するが、ウォルター・ピストンの『管弦楽法』によると、「Caisse Claireは一般的な小太鼓よりも小さいものを指すようである。」とあることから、口径の小さい Snare Drumとごく一般的な口径のSnare Drumを使用するのが妥当かと思われる。
※2 4楽章のB.D.はConcertとKickの両方を併用するのが一般的(全てConcertで演奏するプレイヤーもいる)

演奏所要時間
18~20分程度(1楽章5分、2楽章5分、3楽章3~4分、4楽章5分)

主な録音
上野信一氏による録音。ピアノリダクション版。現状最も手に入りやすい音源はこれ。

大野和士指揮 ザブレク・フィルハーモニー管弦楽団 打楽器独奏:イーゴリ・レシニク

フォレスティエ指揮 オーケストラ・アンサンブル金沢 打楽器独奏:トーマス・オーケリー

*以下の解説は私が学生の時に課題で行った分析を元にしております。かなり信憑性に疑問がありますので、読まれる際は鵜呑みにしないようお願い致します。

パリ音楽院の試験用に書かれた曲で、日本でも管打楽器コンクールの本選課題曲に指定されるなど、最も演奏回数が多く、認知度の高い打楽器協奏曲の1つ。その使用楽器の多さにも関わらず、音楽大学の卒業試験、各種オーディション、コンクールなどで比較的よく取り上げられる。

譜面ヅラを叩くのはそれほど難しくないが、伴奏と合わせるとなると一気に難易度が増す。尚、ピアノ・リダクションの場合、伴奏パートは楽譜通りに演奏するのが困難なため、適宜省略を余儀なくされる。

1楽章:Robuste(力強く)。短い序奏とコーダ付きの三部形式。一部他の拍子が割り込んでくるが、基本的に4分の5拍子。
発想標示通り力強さと勢いに満ちた楽章。ティンパニのチューニングは楽章を通して低音からA,B,Cis,Dis。
ファンファーレ風の序奏の後にティンパニによって印象的なテーマが提示される。このテーマが変奏されつつ3度演奏されると、経過部をはさみ、冒頭のファンファーレの回帰をもって中間部へと進む。中間部は2つの小太鼓で演奏され、管弦楽もリズムの要素が強くなる。やや長いトレモロにより中間部が終結すると、執拗に第1テーマを繰り返す第3部に突入する。ストリンジェンドにより高まった緊張が解放された後、Cis音の連打によるコーダに突入すると、冒頭のファンファーレが拡大されて出現する。そして曲は一気に終止に向いエネルギーを蓄積しているかと思うと、曲は突然終わる。

2楽章:Dolent(哀しげに)コーダ付きの二部構成。4分の4拍子。
冒頭からピアノソロでテーマが奏される。その裏ではマレットで叩くチャイナ・シンバルと、ブラシで奏でるサスペンデッド・シンバルが響く。その後ヴィブラフォンでテーマが奏され、曲全体に現れるモティーフが奏される。中間の経過部では、管楽器にモティーフが移り、再びシンバルが奏される。第2部ではモティーフが展開され、より動的な音楽となる。コーダでは弦楽器のユニゾンでテーマが儚く奏され、ヴィブラフォンの結びで消え入るように終止する。

3楽章:Rapidement(急速に)。序奏付きの三部形式。8分の6拍子。
ラチェットと鞭による呼び込みに管楽器が応えた後、Fis音のみによるシロフォンの印象的なソロが始まる。オーケストラの相槌が最高潮に高まったところで管楽器により第1のモティーフが奏される。その後シロフォンによりテーマが奏され、再びモティーフが顔を出す。カウベルを使った経過部を経た後、二つのモティーフが現れる。中間部はこれを展開しながら曲が進むが、後半調を変えたテーマが出現し、その流れで第1モティーフも顔を出す。その後終結部を支配する第4のモティーフが出現し、これを執拗に展開した後、曲は唐突に幕を下ろす。

4楽章:Allegrement(快速に)。やや自由な三部形式。おおむね2分の2拍子。
トロンボーンのファンファーレと太鼓の相槌によって曲が始まり、短いソロの後この楽章を支配するリズム・モティーフが提示され、そのうえに第1テーマがサクソフォンによって奏される。途中、第2のモティーフが挿入され、ハイ・ハットが出現したところでピッコロとトランペットにより第2テーマが提示される。再びリズム・モチーフ上に第1テーマが現れ、短いソロの後中間部へと進む。ここでトランペットに2つ目のリズム・モティーフが現れる。木管の対話(実は第4のモティーフ)の後、大太鼓や合わせシンバルを使った印象的な経過部をの途中、冒頭のファンファーレが拡大されて出現する。その後変奏されたリズム・モティーフ上に第2テーマ、第1テーマが続けて現れ、最後はあらゆるモティーフと断片化されたテーマが折り重なって出現し、緊張が最高潮に達したとき、突然解放され、強烈なインパクトを持って曲が終わる。

(最終更新日:2016/6/30)

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